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「インディーゲームを盗んで商売する」会社にどう立ち向かうべきか。『Donut County』作者が『Hole.io』を作ったVoodooに警鐘を鳴らす

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PS4 や iOS 向けに『Donut County』というゲームを開発するBen Espositoさんが、自らのゲームのアイデアを盗んだ『Hole.io』を指し、パブリッシャーVoodooに対して「インディーゲームのアイデアを盗み、質の低いゲームで儲けている」ことを指摘し、それに対するいら立ちを語って話題になっている。
彼の言っていることは理解できる。しかし、それに対してメディア・プレイヤーは何ができるのだろうか?

事件はVoodooから『Hole.io』というゲームが出たことに始まる。
『Hole.io』は、なんでも吸い込むブラックホールを操作し、物を吸収してブラックホールを成長させ、最終的に街を飲み込んで、他のAIキャラクターの操作するブラックホールより大きく成長することを目指す競争ゲームだ。多くの国の App Store で1位を獲得し、人気を博している。
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一方、告発を行った Ben さんの『Donut County』は物を吸い込んで大きくなるブラックホールを操作し、ステージをクリアするステージクリア型のパズルゲームとされている。
基本システムは『Hole.io』と同じだが、こちらはすでに5年間制作しており、発表からは4年近く経過している。つまり、アイデアは先行した作品だが『Hole.io』にコアのアイデアを盗まれ、先に発表されてしまった形になる。

では『Hole.io』が完全に許されないコピー品かというと、それは異なる。
『Hole.io』のステージは1つだけで、その中で他のAIと競争するゲームだ。音楽もついていない。ただ、どんどんブラックホールが成長して世界を壊していける仕組みは面白く、中毒性がある。
一方で『Donuts County』にはキャラクターがいて、手作りのステージが多くあり、物語ベースにゲームが進んでいく。実際、Benさんの発言では両者が異なるゲームであることを明言している。
しかし、BenさんはVoodooに苦言を呈した。その理由は、Voodooが2億ドルの出資をゴールドマンサックスから受けて事業を拡大するからだという。
インディーゲームの多くは制作に時間がかかる。コンセプトを示してパブリッシャーや資金提供元を探すこともあれば、リリース前から展示会に出して宣伝することもある。お金に余裕のあるパブリッシャーは、宣伝を見てゲームからコアとなる発明のアイデアを盗み、先に時間のかからないつくり方の(しかし元ネタのゲームと異なる内容で)ゲームを提供してしまえる。
自らのゲームは明確に異なるし、市場において両者がともに栄える余地はあるだろうとしつつも、Voodooのようなパブリッシャーはコピーを推奨するし、資金をバックにより多くアイデア盗用ゲームを作ることに関して懸念を示しているわけだ。

私の印象を言えば、『Hole.io』が『Donut County』に影響を受けている可能性は高いと思う。そして、アイデアを盗まれたインディーゲームは新規性を失って被害を受けるし、物によっては致命傷を受けるだろう。
素晴らしいアイデアを形にするのは時間がかかるのに、それを見て盗むことは容易で、コピーはたやすく行われてしまう。

こういったVoodooのようなショートゲームを作らせようとするパブリッシャーに出会ったことはあるが、彼らはクリエイターではなく広告業者であることが多く、ゲームよりビジネスを重視するタイプの人間だった。
他のゲームを参考にすることにためらいはないだろうし、そこに対して警鐘を鳴らしておきたかった……というのは理解できる。

ただ、『Hole.io』と『Donut County』は違うゲームとして処理されるだろう。また、同一性から弾劾されるべきではない(それをしてしまうと、多くの模倣・変化形のゲームが許されなくなってしまう)。だから、Ben さんの告発も冷静に不快であることを示したのみだ。
付け加えるなら、Voodooなどがアイデアを足すことで劇的に面白くなったゲームだって存在するので、必ずしも単なるコピー業者とも言いがたく、Ben さんのように確固としたオリジナリティを持ったゲーム以外でこの主張は通りづらいだろう。

この問題は今に始まったことではなく、Ketchappという同系統のパブリッシャーが成功したときも同じように「Ketchappはゲームを盗んでいるのか?」いう議論が発生していて、実は恒常的に行われている議論の1つだ。

私の意見としてはゲーム内容が明確に違うものを弾くべきではないと考えていて、できることはと言えば本家がリリースされたときに「これが本家だからみんな遊ぼうよ」と言ったり、インディーゲームをもとにした面白い無料ゲームが出たときに「元のゲームを遊んでね」と言うことだろうと思っている。

読者の皆さんは、これについてどう思われるだろうか?
何かできること、するべきことがあると思えば、ぜひコメント欄で意見をいただきたい。